高市政権の弱点を直撃したイラン危機―対策も裏目、発想の大転換が必要

米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する、ホルムズ海峡の事実上の封鎖は、それでなくても物価高に悩まされる日本の人々にとっても、大きな打撃となりうるものです。原油高で跳ね上がったガソリン価格に対し、高市政権は石油備蓄の放出や、基金を活用したガソリン価格抑制策を行うなど、一見、迅速な対応をしているように見えますが、イラン危機は、高市首相個人のイデオロギーやパーソナリティー、エネルギー政策などの政権の構造的弱点を直撃するものでもあります。このままでは、原油高のみならず、様々な問題による複合的な影響で、日本の経済・社会が深刻なダメージを被ることは避けられません。ただ、ピンチはチャンスでもあり、ここで政策を大きく転換できれば、イラン危機の影響を最小限にしつつ、日本の経済・社会を立て直すこともできるでしょう。本稿では、イラン危機があぶりだした高市政権の弱点を解説しつつ、日本が今すぐ取るべき代替策も示します。
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〇トランプに媚びて国を亡ぼすのか?
高市首相の問題の一つが、極端な対米追従です。イラン攻撃が始まってから、高市首相はその違法性について何ら言及していません。イラン攻撃は明らかに国連憲章に反し、国際秩序を破壊するものであるにもかかわらずです。しかも、高市首相は今月19日の訪米でトランプ大統領に文字通り抱きつき、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルド(・トランプ大統領)だけだと思っている」とまで言うなど、徹底的に媚びへつらいました。こうした高市首相の振る舞いは、一国のリーダーとしてあるまじき痴態であるだけでなく、日本の国民の生活、あるいは命すらをも危うくするものです。
日本があまりに露骨に米国やイスラエルの側を支持するならば、日本向けタンカーがホルムズ海峡を通れるようにするためのイラン側との交渉が難しくなってしまいます。輸入する原油を運ぶタンカーは、その8割以上がホルムズ海峡を通ってきました。そのホルムズ海峡が事実上封鎖されていることは、まさに日本にとって死活問題です。米国とイスラエルが勝手に始めた、しかもその根拠も曖昧で国連憲章違反であるイラン攻撃を支持するために、日本への原油供給を途絶えさせることは、まさに国を滅ぼしかねない愚行です。
【日本がやるべき対案】
イランのアラグチ外相は「もし日本がホルムズ海峡を通過するために接触してくれば、通過を支援する用意がある」と発言しています。日本には241日分の石油備蓄があるとは言え、イラン攻撃とそれに伴うホルムズ海峡周辺の緊張が長期化しない保証はありません。イラン攻撃については米国やイスラエルと距離を置き、イラン側と交渉することも含め、日本が安定して原油を輸入できることを最優先にすべきです。

〇税金をバラ撒いてガソリン浪費は危うい
支持率の維持に腐心し、その場しのぎの対応をすることも高市政権の問題点です。今月24日の閣議で、2025年度予算の予備費から8000億円ほどをガソリンの補助金に充てると決定されましたが、「ガソリン1リットル=170円」の水準を保つには、月3000億円ほど必要であり、先に決定された2800億円の基金活用を合わせても、約3か月半しか持ちません。しかも、こうした税金の補助はあくまでガソリンのみを対象としており、石油製品等への補助はないという問題もあります。IEA(国際エネルギー機関)は、今回のホルムズ海峡の封鎖について、「1970年代のオイルショックより深刻」だとして、各国に省エネを求めています。これに対し、高市政権は石油使用の節約を求めておらず、「これまで通り給油してほしい」といった発言すらしています。上述の原油輸入をできるようにイランと交渉することもなしに、ホルムズ海峡の封鎖が長引くこともあり得る中で、石油使用の節約を求めず、ただガソリン価格の補助を行うというのは、非常に危ういものがあります。
【日本がやるべき対案】
まずはイラン側と交渉で日本が安定して原油を輸入できることを最優先にすべきですが、もし交渉が難航したり、ホルムズ海峡の封鎖が長引いたりしたことを考え、ガソリン含め、石油関連製品の節約、省エネも同時並行で行うべきです。
〇ウクライナ侵攻時から何も学ばない石油依存
イラン攻撃があぶり出した高市政権の問題点として、化石燃料依存から脱却できないエネルギー政策があります。石油、ガス、石炭といった化石燃料のほぼ全てを日本は海外からの輸入に依存しています。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/first_learn_energy_self_sufficiency.html
その危うさは、イラン攻撃だけではなく、2022年のロシアによるウクライナ侵攻で既に明らかになっていました。世界最大規模の化石燃料輸出国であるロシアが戦争を始め、同国への制裁も始まったことから、化石燃料の価格は国際的に高騰し、当然、日本もその影響を受け、2022年に日本が化石燃料の輸入に費やした額は35兆円にも達しました。このように、化石燃料の輸入は、毎年、膨大な国富を海外に流出させているのです。
日本は2022年、ガソリン価格抑制の補助金を開始し、昨年末までに合計8兆1719億円を費やしてきました。この補助金は昨年末のガソリンの旧暫定税率廃止と共に終了しましたが、上述のようにイラン攻撃を受け再開されることになり、上述の8000億円と合わせ、約9兆円になる見込みです。こうした補助金はガソリン価格高騰を緩和させるものではありますが、一方で、化石燃料に依存する日本社会・経済の脆弱性を克服するものではなく、むしろ、克服を阻害するものとなってしまっています。
こうした日本の変化の無さと対照的なのが、EU(欧州連合)の国々です。ウクライナ侵攻によるエネルギー危機は、ロシア産の原油や天然ガスに依存していたEUにとっては大打撃でしたが、2022年5月の時点でEUは脱ロシア依存・脱化石燃料依存のエネルギー計画として、REPowerEUを策定しました。ロシア産原油や天然ガスを、EU内での太陽光や風力などの再生可能エネルギーへとどんどん置き換えていきました。侵攻以前に原油は約27%を、天然ガスは45%をロシアからの輸入に依存していた状況を大幅に減らし(下図)、2027年には脱ロシアを完了すると見込まれています。こうした取り組みが進んでいることから、EUでは、今回のイラン攻撃に伴うエネルギー危機もREPowerEUをさらに推進する気運ととらえる動きすらあるのです。
日本ではガソリン価格抑制など、化石燃料に依存し続け、補助金を出し続けるという状況を変えようともせず、高市政権の政策もこれまでの延長線です。ウクライナ侵攻、イラン攻撃でのエネルギー危機が、世界経済の脱炭素化を加速させていくだろう中で、日本は取り残され、かつ、ホルムズ海峡の封鎖が長引けば国として立ち行かなくなるという脆弱性に、今、直面しているのです。
【日本がやるべき対案】
REPowerEUのような、再生可能エネルギーの活用による社会・経済の脱炭素化を行うこと。ガソリン車からEV(電気自動車)への移行も推進すること。

「イランでの戦争は、世界が脆弱な化石燃料ルートに依存していることを露呈させ、再生可能エネルギーへの移行を加速させる必要性を改めて浮き彫りにしている」
apnews.com/article/middle…Energy fallout from Iran war signals a global wake-up call for renewable energyThe Iran war is exposing how much the global economy still dapnews.com
〇危機を自滅の加速器から「日本再生の好機」に変える
イラン危機は高市政権の弱点を完璧に直撃しました。日本初の女性首相として「新しい自民党」のイメージをアピールしてきましたが、結局のところ、
・日本の国民の命や生活よりも米国追従を優先
・支持率目当ての場当たり的な税金の使い方
・化石燃料依存
という点において、これまでの自民党政治と何ら変わりありません。しかし、この危機を「自滅の加速器」ではなく「日本再生の好機」に変えることをあきらめてはいけません。私たち市民の方から声をあげ、政治を変えさせることが私たち自身のために必要です。
(了)
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