人としての心あるのか?グレタさん笑うX民が知るべきガザの絶望

ガザ支援船団Global Sumud Flotilla のインスタグラムから https://www.instagram.com/globalsumudflotilla/
パレスチナ自治区ガザでは、イスラエルが同地区への人道支援物資の搬入を極端に制限しているため、深刻な飢餓が約210万人のガザ住民の命と健康を脅かしています。こうした中、著名な環境活動家のグレタ・トゥーベリさんは44カ国の民間船団と共に人道支援物資を届けるためガザへと向かっています。ところが、日本のSNSではそのグレタさんの外見を揶揄する投稿が注目を集めているのです。
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〇グレタさん揶揄、同調と反発
問題の投稿は、X(旧ツイッター)で、日本人のものと思われる、あるアカウントが、ガザに向かうグレタさんの報道写真について、
「もう男が隠せなくなってきたグレ太くんwww」
と、彼女の険しい表情を揶揄したものです。この投稿には3万件もの「いいね」が付き、模倣するような投稿も相次いでいます。

グレタさんの外見を揶揄するXでの投稿
過去にイスラエルがガザへの人道支援のため慈善団体の船を攻撃し、乗員を殺害した事例もあるなど、ガザに向かうことは非常に困難かつ危険を伴いますが、その勇気と、何よりもガザでの飢餓の深刻さから、世界ではグレタさん達を賞賛し応援している人々が大勢いるのですが、これと対照的なのが上述の投稿です。
問題の投稿に対し、流石にXでも批判が相次ぎました。
・「命懸けで虐殺を止めに行ってる若い女性についてのこんな投稿が、3万近くいいねされる国に住んでることが、とてつもなく惨めだ」
・「断固たる決意で人命救助に尽す凛々しき眼光と、それを安全な場所から嘲笑する愚劣なコメント。対照的」
・「日本の政治が低レベルになる理由がここに凝縮されている。今ガザで起きていることを想像することすらなく、必死で活動している人を笑う。日本が貧しくなっていくわけだよね」
これまでガザを何度も取材し、現地に友人や知人のいる筆者としても、上述のような揶揄をした人やそれに同調する人々の感覚に対しては、怒りを通り越して、なぜそこまで人間性が欠如しているのだろうとの疑問を持たざるを得ません。ガザの飢餓の深刻さを知らないのか、それとも知った上での揶揄なのか。ともかく、取り急ぎ、現在のガザの状況について解説する記事を書かなくては、と思った次第です。
深刻なガザの飢餓、国連は「壊滅的」と警告
これまで、ガザへの人道支援はUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)などの国連の組織や日本含む各国の人道支援団体が行ってきました。これに対し、イスラエルは一般市民の住宅地を猛空爆し、UNRWAの現地職員達も殺害した他、国連関連施設への攻撃も繰り返してきましたし、欧米の人道支援団体の車列も攻撃し、同団体職員を殺害しています。さらに、イスラエルは今年3月にガザへの人道支援物資の搬入を極端に制限するようになりました。

イスラエルは同国と米国が組織した「ガザ人道財団」による支援で十分と主張しているのですが、実際にはガザ人道財団の人道支援物資の供給では全く足りない上、同財団の配給所に食料を受け取ろうとやってきた人々対し、イスラエル軍が実弾発砲して、多数を死傷させるということが相次いでおり、今年8月半ば時点で約1760人の人々が配給所付近で殺害される異常事態となっています。飢えて支援を必要とする民間人を狙い撃ちし殺害していくという、あまりに非人道的な暴挙に対し、「国境なき医師団」や国連の人権関連の専門家達は、ガザ人道財団を即刻解体し、まともな人道支援組織によるガザへの支援物資の搬入を再開するよう、強く求めています。

youtube.com/watch?v=FxUBpn…
#ガザ 元米特殊部隊将校、ガザの食料配給拠点で戦争犯罪を目撃したとBBCに話す (注意:冒頭から痛ましい映像が流れます)ヘダヤ・アル・ムタウィさんの生後1歳半の息子モハメドちゃんは、体重はわずか6キロ www.youtube.com
既に半年近く十分な食料が搬入されていないため、ガザの飢餓は極めて危機的なものになっています。国連の総合的食料安全保障レベル分類 (IPC) は、ガザの人口の約4分の1にあたる50万人が、飢餓の5段階評価で最も深刻なフェーズ5(壊滅的な飢餓)にあり、さらに人口54%の107万人がフェーズ4(緊急事態の飢餓)に陥っていると発表。

https://civil-protection-humanitarian-aid.ec.europa.eu/system/files/2025-08/IPC_Gaza_Strip_Acute_Food_Insecurity_Malnutrition_July_Sept2025_Special_Snapshot.pdf
実際、現地の報道や国連、人道支援団体などの報告等によれば、ガザの病院にはガリガリの骨と皮だけになった子ども達が運び込まれており、子ども達の餓死が相次いでいる、大人達も20キロ、30キロも体重が減り衰弱しているとのこと。中東の衛星テレビ局アルジャジーラの記者は「人々にとって飢餓は爆弾と同じくらい致命的なものとなっている」とリポートしています。

#ガザ で初めて #飢きん が確認されました。#WFP、#FAO、#UNICEF、#WHO は飢餓と栄養不良による死を食い止めるため、即時停戦と妨げのない人道的アクセスの確保を改めて要請しました。
🔽詳細はこちら
bit.ly/47QSKzU
イスラエルがガザで飢餓を引き起こしていることに対し、「戦争犯罪」であるとの批判の声も高まっています。今月末、国連安保理では、米国を除く全ての常任理事国・非常任理事国の14カ国が「飢えを戦争の武器として用いることは国際人道法で禁止されている」として、即時停戦や支援物資の搬入に対する全ての制限を即時に解除するようイスラエルに求める共同声明を発表しました。

www3.nhk.or.jp/news/html/2025…
「人為的な危機であり、飢えを戦争の武器として用いることは国際人道法で禁止されている」としたうえで、即時停戦を呼びかけている。
#ガザ 国連安保理 ガザ地区「飢きん」発生で米国除く理事国が声明 | NHK 【NHK】国連安全保障理事会のアメリカを除くすべての理事国は27日、パレスチナのガザ地区での「飢きん」の発生について共同 www3.nhk.or.jp
〇グレタさんら人道支援船団がガザに向かう
こうした中、グレタさんら各国の著名人や欧州議会の議員、活動家達によるガザ支援船団「グローバル・スムード船団」への国際的な支持は拡大。支援船はスペインやイタリア、チュニジアから出港し、最終的に70隻の大規模船団になる見込みで44カ国から数百人が乗船。各出港地では多数の市民による支持集会も開催されています。
ガザ支援船団に対し、イスラエルはこれまでの実際にそうしてきたように海軍を派遣して船団を実力行使で止め、グレタさんらを拘束しようとするでしょうが、今回の船団はかつてない規模であり、またガザ封鎖に関してイスラエルへの国際社会からの批判も非常に強くなっているため、イスラエルがガザ支援船団を止めることは容易ではないでしょう。そもそも、公海上で航行する民間の船を実力行使で強制的に止め、乗員を拘束することは、国際法違反の海賊行為です。仮に、イスラエルが今回のガザ支援船団を全て止めたとしても、イスラエルへの国際的な圧力はさらに高まることは避けられないでしょう。これまで、イスラエルを支持・支援してきた欧州の国々も、対イスラエル制裁を科す方向へと舵を切ることになるかもしれません。

youtu.be/Cu2SHdV0Hlk
このようにガザの飢餓は極めて深刻であり、これを引き起こしているイスラエルによるガザ封鎖は国際人道法違反の戦争犯罪であることは、国連安保理の常任理事国・非常任理事国の国々も指摘しており、何とかガザの人々に支援物資を届けようとするグレタさんらの試みは各国の人々の後押しを受けています。日本のネット界隈には、何故かグレタさんに異常に反感を持つ人々がいるようですが、いろいろな意見があるにせよ、グレタさんの志や行動に比べ、本稿冒頭で取り上げたような日本のネットでの揶揄は、あまりにレベルが低すぎるのではないでしょうか。「日本の恥」となるような投稿は謹んでもらいたいところです。また、そうしたヘイトが一気に拡散するXのアルゴリズムは社会にとって有害です。Xに対する規制や監視強化はEUやブラジルなどで行われていますが、「言論の自由」を主張するのであれば、Xは自主的にアルゴリズムを見直すべきでしょう。
各世論調査を見ても、それまで支持が多かった欧米においてもイスラエルへの反発は広がっていますし、これまで何度か決議されてきた国連総会でのガザ停戦決議では圧倒的に停戦を求める国々が多数派です。イスラエルは停戦し、ガザへの人道支援物資の搬入に関する全て制限を解除すべきでしょう。
(了)
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