イスラエル、ミサイル被害を訴えるも「どの口で言う」と炎上―最も憤っているのは国連専門家ら

SNS上にアップされたイランによるイスラエルへのミサイル攻撃
今月13日、イランの核施設や要人等への先制攻撃を行ったイスラエル。それに対する報復として、イランは多数の弾道ミサイル等をイスラエルに向け発射し、同国各地に着弾し、死傷者が出ている模様です。こうした状況を受け、X(旧ツイッター)でイスラエル政府はイランを批難しましたが、その投稿に対し「どの口で言う」「ガザで何人殺した」等と逆に批難が殺到しています。しかし、実は、こうしたイスラエル批判をしているネットユーザー達よりも、さらに激しく憤り、「具体的な行動」を求めてきたのが、国連の人権機関の専門家達なのです。
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〇イスラエル政府のSNS投稿に批難殺到
イスラエル軍によるイラン各地にある核関連施設や軍事施設などへの大規模な攻撃により、軍関係者や核関連の科学者等が死亡した他、子ども含む民間人も犠牲になっているとのことです。イラン側の発表によれば、13日から現在まで、少なくとも224人が死亡したとのこと。一方、イラン側のミサイルがイスラエルの主要都市テルアビブや北部の都市ハイファ等に着弾。現地報道によれば24人が死亡、592人が負傷したとのことです。
*情報は、本稿作成時(6月16日夜)のもの。
こうした中、Xのイスラエル政府公式アカウントは、瓦礫の中から助け出されたという赤ちゃんを抱いた女性警官の写真を投稿。「イランの標的は、まさにこうした命です」として、イランによる攻撃を批難しました。ところが、この投稿に対し、「あなた達はガザ攻撃を開始してからの500日間以上で、毎日、30人の子どもを殺しているだろう」「パレスチナ人達は毎日、瓦礫の中から子ども達を救いださないといけない」等と、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで行っている無差別攻撃を批難するコメントが殺到しているのです。
上述のイスラエル政府の投稿を引用するかたちで、在日イスラエル大使館もXでの公式アカウントにて日本語で投稿しましたが、やはりこちらも批判的なコメントが殺到しています。

イランの標的は、まさにこうした命です。
「自分のとこの子どもや一般人を人の命として見る事はできるようだが、何故パレスチナやイランの子どもや一般人が相手になったら同じ人の命である事が急にわからなくなる?」
「今すぐガザへの攻撃をやめてから言え」
「パレスチナを封鎖して飢えさせ、支援物資に寄ってきた人々を撃ち殺す。非人道的と言う表現では足りないほどの残虐行為だが。それがイスラエルのやってることだよ。いいかげんにしろよ」
「お前らガザで女子供の頭狙って撃ち殺すわ生きたまま避難民テント空爆して燃やし殺すわ好き放題する癖にな」
「呆れてものが言えない。日本では『どの口が言っている?!』と表現します。あなた方が日々標的にしているのはパレスチナの子供たちですよね。そして民間人の家、学校、病院…。まさに『こうした命』ですね」
国際人道法は、紛争当事国がどこであれ、戦時であっても民間人を攻撃しないことを義務付けています。ですから、イスラエルの市民への攻撃も国際人道法違反の戦争犯罪となるのですが、SNS上の反応は極めて冷ややかです。それはイスラエルが、ガザやヨルダン川西岸、レバノンやイランへの攻撃で、民間人を攻撃しており、とりわけガザにおけるイスラエルの国際人道法違反・戦争犯罪は極めて深刻だからでしょう。そのため、イスラエルがイランの反撃による被害をアピールしても、むしろ反発を買う状況となっているのです。

news.yahoo.co.jp/expert/article…
b.hatena.ne.jp/entry/s/news.y…
今年1月末、パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍の攻撃を受けた車に取り残され、電話で助けを求めていた6歳の少女ヒンド・ラジ…

news.yahoo.co.jp/expert/article… #ガザ 難民キャンプ空爆、現地から悲痛な報告と映像(志葉玲) - エキスパート - Yahoo!ニュース イスラエル軍が今週火曜日に空爆した、パレスチナ自治区ガザ北部のジャバリア難民キャンプの状況について、現地のジャーナリス news.yahoo.co.jp

〇イスラエル政府も国民も反省なし
ただ、現状のままではイスラエルがその姿勢を改めることは、あまり期待できないと言えるでしょう。イランの反撃を受けてなお、一部の例外をのぞき、イスラエルのメディアでは同国政府のイラン攻撃を支持する論調が目立ちます。
ガザでの無差別攻撃や徹底的な破壊についても、イスラエルの人々は、ほとんど意に介していないようです。先月、イスラエル民主主義研究所が行った世論調査では、「イスラエルは、ガザでの軍事作戦で、同地区のパレスチナ民間人の苦しみをどの程度考慮すべきか?」との設問に対し、同国のユダヤ系市民*の回答者の大多数(76.5%)は「全く考慮すべきではない、あるいはごくわずかしか考慮すべきではない」と回答している有様です。
*イスラエルの各民族の人口比率は、ユダヤ人が約73%、アラブ人が約21%、その他が約6%(2024年5月イスラエル中央統計局のデータ)

出典:イスラエル民主主義研究所 https://en.idi.org.il/articles/59568
〇国連の専門家ら激怒「今すぐイスラエルを止めろ!」
イスラエルが自発的に国際人道法を遵守するようになる可能性は極めて低い中で、必要なのは、国際社会からの圧力です。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の独立した専門家チームは、先月7日発表の声明で、「各国は今すぐ行動して暴力を終わらせなければ、ガザのパレスチナ住民の絶滅を目の当たりにすることになる」「絶滅は、我々が共有する人類と多国間秩序に取り返しのつかない結果をもたらす」と極めて強い論調で警告。国際社会の即時の介入を求めています。
同声明は、イスラエルのガザ攻撃について、「誰も逃れることはできません。子ども、障がい者、授乳中の母親、ジャーナリスト、医療従事者、援助活動家、そして人質もです。(今年3月の)停戦破棄以来、イスラエルは毎日パレスチナ人を殺害しており、今年3月18日にはピークを迎え、24時間で600人の犠牲者が出ました。そのうち400人は子どもでした」「今年5月4日の時点で(2023年10月の攻撃開始から)ガザで5万2535人以上が殺され(そのうち70%は依然として女性と子ども)、11万8491人が負傷したと報告されています」という事実をあげ、その苛烈さを「人間の生命と尊厳を冒涜する、最も容赦ない行為の一つ」と評しています。

ohchr.org/en/press-relea…
また同声明は「食料と水は何ヶ月にもわたって供給が途絶え、飢餓、脱水症状、そして病気を引き起こしています。その結果、多くの人々、特に最も脆弱な立場にある人々にとって、さらなる死が日常的な現実となるでしょう」と懸念。イスラエルがガザを封鎖し人道支援の搬入を阻害、200万人以上の人々を深刻な人道危機に追いやっていることについて、「ガザを崩壊の危機に追い込むための計画的な圧力は、イスラエルの行為の違法性・責任をさらに裏付けるものだ」と指摘しています。
その上で、「(昨年11月に発行された、ネタニヤフ首相らイスラエル指導者に対する)国際刑事裁判所(ICC)による戦争犯罪および人道に対する罪での逮捕状は、即時の行動と遵守を必要としています」と強調。また、イスラエルを軍事的または政治的に支援し続けることは、大量虐殺やその他の重大な国際法違反に加担するリスクがあると警告しました。
つまり、最早、イスラエルに対し懸念を表明するような段階は超えており、その暴走を止める具体的な行動が必要だと、OHCHRの専門家達は求めているのです。これは極めて強い勧告であり、実は、本稿で紹介したネット上でのイスラエルへの批難・批判よりもさらに厳しいものです。こうした勧告を踏まえれば、日本を含めた各国は、最低でも対イスラエル、或いは同国政府指導者ら個人への制裁を真剣かつ迅速に検討すべきなのでしょう。
(了)
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