トランプ・プーチン・高市に共通!?危機を招く「人間的な要因」―翻弄される世界と日本

プーチン大統領、トランプ大統領、高市首相には共通する問題がある。
今、世界は複数の火薬庫を同時に抱えています。今年2月、米国とイスラエルによるイランへの先制攻撃が開始されました。攻撃開始から2ヵ月近く経つ今も事態の収拾の目途はたっていません。イランは即座にホルムズ海峡の事実上の封鎖を宣言し、日本への原油供給の8割を占める重要な海上ルートが麻痺状態に陥りました。日本ではガソリン価格の高騰、電力・ガス料金の値上げが連鎖的に発生しています。さらに2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は4年を超えてなお膠着状態が続き、出口が見えません。
これらの出来事を冷静に振り返りますと、公式の大義名分―「脅威の除去」「領土防衛」「核拡散防止」―の裏側で、権力者の個人的な自己顕示欲やトラウマ、強烈な執着といった「人間的要因」が、合理的な政治判断を大きく歪めている構造が見えてきます。
国際政治学者ケネス・ウォルツ氏は、著書『人間、国家、戦争』(1959年)で戦争の原因を分析する枠組みとして「3つのイメージ」を提起しました。すなわち、「第1のイメージ」(個人に起因するもの)、「第2のイメージ」(国家・社会に起因するもの)、「第3のイメージ」(国際システムに起因するもの)です。
イラン攻撃やウクライナ進攻に当てはめてみると、「第一のイメージ」によるものが大きいのではないでしょうか。そして、米国やロシア程ではないのかもしれませんが、権力者の暴走が国民を危機に直面させるということは、日本にとっても他人事ではありません。
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〇トランプ大統領―戦争を引き起こす「反社会的気質」
トランプ大統領が主導する米国のイラン攻撃についても、「核開発阻止」という表向きの大義名分の裏側に、トランプ大統領自身の誇大妄想や、支配力を誇示したいという強い欲求などの危うさがあり、それが「イラン攻略は簡単だ」というイスラエルのネタニヤフ首相の非現実的な提案を受け入れた要因だと、海外の複数のメディアで論じられています。
今月15日には米国の著名な精神科医たちが連名でトランプ大統領の精神的不安定性について議会に緊急書簡を送付。トランプ大統領は反社会的な気質の複合体である「ダークトライアド」*であると指摘し、その暴走がエスカレートすることを懸念。「米国議会は米国憲法修正第25条第4項に基づき、大統領の職務遂行能力について副大統領ら政権幹部と正式に協議を開始すべきである」等と求めました。

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#イランTop psychiatrists issue urgent letter to Congress about Trump's mental instabilityEditor’s note: The following letter was sent to the bipartiswww.alternet.org
もちろん、直接診察していない公人への遠隔診断には慎重であるべきという批判もあります。しかし、当初の想定と大きく異なる状況に直面した際に混乱・憤慨し、軍事的エスカレーションへと突き進むトランプ大統領の行動パターンは、理性的な国際政治の指導者像とはかけ離れていることは確かでしょう。
*ダークトライアドとは、サイコパシー(共感性の欠如、衝動性、反社会的な言動)、マキャベリズム(嘘や裏切りを厭わず他者を利用する)、誇大ナルシシズム(過大な自己愛、自己陶酔、他者への見下し)という3つの有害なパーソナリティ特性の総称。
〇プーチン大統領―「臆病な独裁者」の恐怖と暴走
ウクライナ侵攻が始まった2022年当初、日本では「NATOの東方拡大が原因だ」という解釈が広く流布しました。しかし、ウクライナの人々との対話や、同国における2013〜2014年のユーロ・マイダン(EUとの関係強化、民主化、汚職追放等を求めた市民革命)の経緯からは、別の構図が浮かび上がります。

ウクライナ首都キーウ、筆者のインタビューに応じてくれた人々
実のところ、NATOやウクライナがロシアの存亡に関わるような安全保障上の脅威をもたらしているわけではありません。プーチンのウクライナ侵攻の決断は、民主主義的なウクライナの出現がロシアにも伝播し、自身の独裁体制崩壊につながり得るという恐怖に根ざしたものでしょう。上述のユーロ・マイダンでは、「ロシアの操り人形」的な大統領であったヤヌコビッチ氏が失脚、国外逃亡しました。これを受け、プーチン大統領はすぐさまウクライナ南部のクリミア半島を併合、東部のドンバス地方にロシア軍を進軍させました。ウクライナの人々が語るように、2014年の時点で既にウクライナ進攻は開始されていたのです。
こうしたプーチン大統領のウクライナへの過剰な干渉の背景として、2011年にロシア国内での反政府デモがあるとの研究、メディアによる分析もあります。

newlinesinstitute.org/global-securit…
#ウクライナFear of Popular Revolutions Drove Putin to Attack Ukraine - New Lines InstituteThe war in Ukraine is informed by Russia’s interventions in newlinesinstitute.org
2011~2012年、ロシアでは議会選挙での不正を受けて、モスクワやサンクトペテルブルクなど各地で大規模な抗議運動が起きました。1991年のソ連崩壊以来最大規模のものであり、初めて普通の市民たちが権力の座を脅かす意思と能力を示した瞬間でした。
これにプーチン大統領は心底怯えたとされ、苛烈な弾圧を行いました。そして、それに飽き足らず、親ロシア政権を倒したウクライナの民主化の動きを潰そうとした挙句、ロシアとしても国際的に孤立し、夥しい数の戦死者、負傷者を出し続けるという泥沼に陥りました。
〇高市首相―「安倍の遺志に取りつかれた政治家」
ロシアや米国ほど直接的ではありませんが、日本も決して他人事ではありません。高市早苗首相の言動や政策決定には、故・安倍晋三元首相の「遺志」を受け継ぎ、それをより強化していくことに極めて強い執着があります。つまり、日米同盟を際限なく「深化」させ、改憲への動きを加速し、台湾有事への介入も含めた対中国強硬路線です。

とりわけ、異常さが目立つのが「台湾有事は存立危機事態」発言です。高市首相は2025年11月7日の国会答弁で、台湾有事を念頭に「戦艦を使って武力の行使を伴うのであれば、存立危機事態になりうるケースであると私は考えます」と答弁しました。つまり、安保法での自衛隊が武力介入する事態だと明言したのです。この発言に対し、学者や元政府高官、弁護士らは「従来の政府見解と異なり、憲法や国際法に違反する」として発言の撤回を求める緊急声明を発表しました(関連情報)。
日中関係は急速に緊張を高め、中国側は日本への渡航自粛や海産物輸入停止などの対抗措置を打ち出しました。衝撃的なのは、12月8日、質問主意書への答弁書により、この台湾有事発言が高市首相個人のアドリブだったことが判明したことです。戦争にも発展し得る日中関係の深刻な危機が、政府として練り上げた政策ではなく、首相個人の「思い」から飛び出したのです。
中国と戦争になれば、日本の在日米軍基地や自衛隊基地周辺も攻撃を受けることは十分想定されます。しかも中国は日本の最大の貿易相手国であり、2024年の貿易総額は44.2兆円です。レアアースの輸入の約6割を中国に依存する日本の産業が極めて厳しい状況に陥ることは確実です。
高市首相の「執念」は、こうした経済的・軍事的な現実を合理的に判断する前に、「安倍氏の遺志を完成させる」という情念に先走ってしまっています。これはウォルツが言う「第1のイメージ」(個人的要因による戦争原因)の、日本版に他なりません。
〇「人間的要因」という共通構造
プーチン、トランプ、高市――三者には共通する破滅的な傾向があります。それは、個人的なトラウマ・承認欲求・執念が、国家としての合理的判断を歪めるという問題です。トランプ大統領は肥大した自己顕示欲と歴史的レガシーへの執着から、イラン攻撃に突き進みました。プーチン大統領は「民主化の波に怯えた独裁者」として、自国支配を守るためにウクライナに進攻しました。高市首相は「安倍元首相の遺志」に固執する余り、日本の国益を客観的に判断する能力を自ら損なっています。その危うさを、私達は直視すべきなのでしょう。
〇日本がなすべきこと――「法の支配」の再建へ
では、こうした危うい権力者たちの暴走に対し、日本は何をすべきでしょうか。答えはウォルツ氏の言う「第3のイメージ」(国際システム)と「第2のイメージ」(国家・社会)において、いかに戦争を止め、未然に防ぐ動きをしていくかです。
第3のイメージ(国際システム)として、具体的には、国連憲章や国際法、国際人道法による「法の支配」をいかに取り戻し、強化するかは非常に重要です。国連憲章2条4項(武力不行使原則)は、国際関係において武力による威嚇や行使を禁じる国際法の根幹的ルールであり、とりわけ先制攻撃は違法なものとされます。これは第二次世界大戦後の国際秩序の大原則です。この原則が大国の都合で踏みにじられるたびに、世界はより無秩序な方向へと向かいます。米国追従ではなく、法の支配に基づく国際秩序の守護者としての外交的貢献こそが、日本の役割であるべきです。

改憲に反対する国会前でのデモ 筆者撮影
そして「第2のイメージ」(国家・社会)として、国内においては、日本国憲法第9条を中心に平和主義の原則を守り抜くことが、極めて重要です。「台湾有事は存立危機事態」発言など、高市首相の「執念」とも言える偏ったな思想は日本の国民の命や生活を脅かすものとなり得ます。現に、ホルムズ海峡封鎖に関して、米国に配慮してイランと直接交渉を行わないことで、日本は深刻なエネルギー危機、資材不足に直面しつつあります。だからこそ、歯止めしての日本国憲法が本当に必要です。
暴走する権力者が世界も日本にも深刻な悪影響を及ぼしている今だからこそ、それに抗っていくことが、私たち一人一人にも国際システム、国内政治・社会のアクターとして求められているのでしょう。
(了)
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